仲井戸麗市 「Monthly CHABO vol.11 「COVER Night!!」」 南青山 MANDALA
今日は南青山MANDALAで、仲井戸麗市「Monthly CHABO vol.11 「COVER Night!!」」があった。
この一年、毎月行われてきたこのシリーズライブ、今回もそのうちの一回として行われるはずだった。
だけどあの予期せぬ出来事によって、特別な意味を持つライブになった。
予期せぬ出来事、それは清志郎の死・・・。
CHABOはひたすらノーコメントを貫き、そのまま今回のライブを迎えた。
今回の「Monthly CHABO」は、昨日と今日との2DAYSで行われる。
昨日のライブの模様はネットや新聞に書かれ、それを読んで少しだけ心の準備をすることが出来た。
だけど実際にCHABOの声を聴くまでは、なんとなく釈然としないものがあった。
CHABOのナマの声を聴くことで、モヤモヤしているものにケリをつけようと会場に足を運んだ。
開場時間17時の少し前に会場に着くと、いつもどおりお客さんが開場を待っていた。
いつもと変わらない風景・・・。だけど心なしか、みんな元気がないように思えたのは気のせいか?
ほぼ予定どおりに開場し、整理番号49番でフロアへ入場。
お気に入りのステージ向かって左、一段高くなっているフロアの椅子に座る。
今日はソロのステージなので、ステージが心なしかガランとして寂しく見える。
予定より少し遅れて、18時10分過ぎ開演。
開演のSEが流れる前から、シーンと静まり返るフロア。
緊張した空気の中、CHABOが登場。珍しくサングラスをかけている。
そして無言のまま、John Lennonの「Oh My Love」を弾き始める。
あまりにも切ない旋律に、胸がグッと締め付けられる。
CHABOは「そういうコトがあってしまったんで・・・」と語り始め、
「清志郎くんの物語がそれぞれみんなの中にあると思うので、このライブを二日間、
清志郎への追悼ライブということにさせてください」と一言一言噛みしめるように話す。
今回は「COVER Night!!」ということで、このシリーズライブで生まれたカバーの特集なのだけれども、
一曲一曲すべてが清志郎に捧げられ演奏されていく。
フロアのあちこちから、すすり泣く音が聴こえてくる。
わたしもグッと涙をこらえながら、演奏に耳を傾ける。
二曲目は、Elton Johnの「Your Song」。終わったあと、この曲を好きになったきっかけを話す。
いつもながらのユーモアたっぷりのエピソードに、心なしかちょっとホッとする。
The Doors「Light My Fire」のJose Felicianoバージョン、
Aretha Franklinの「I Say A Little Prayer」と、
もうすっかり聴き慣れた気がするカバー曲が次々と繰り広げられていく。
ライブでカバーを演奏するのは簡単だけど、CD化するのは著作権があるので難しいという話から、
古井戸時代にカバーしていた曲を少しづつ弾きながら、清志郎との出会いについて話す。
そして「東京ドームなんかで演るなよ」と言いながら、Simon and Garfunkelの「4月になれば彼女は」。
The Rolling Stonesの「As Tears Go By」をしっとりと演奏したあと、
自分がどんな音楽を好きになってどんなカバーをしてきたのかを振り返る。
CHABOがRCサクセション参加を決めるきっかけになった清志郎からの留守番電話のバックには、
The Rolling Stonesの「Angie」が流れていたというエピソードが笑える。なんか、清志郎らしい。
Neil Youngの「I Believe in You」は、初めて聴くカバー。歌詞が、ちょっと、きていた。。。
もはやCHABOのオリジナルと言ってもよい「Born In 新宿」が始まると、自然と手拍子がわき起こる。
それに応えるように激しくDobroをかき鳴らすCHABO、何かにとり憑かれたような渾身のプレイだ。
Carole Kingの「You've Got A Friend」、Stevie Wonderの「A Place In The Sun」、
曲調はさまざまだけれども、どの曲もCHABOの清志郎への想いがぎっしり詰まっている。
ここからポエトリーリーディングとなり、レインメーカーを鳴らしながら「Autumn Rain」。
しっとりとした語り口から魂の叫びへ、静と動との鮮やかなコントラスト・・・。
そして、The Bandの「Cahoots」。ある夏の清志郎とCHABOとの出来事を綴った詩。
淡々と朗読を続けるCHABO。その心境はどれだけのものなのだろうか。
The Bandの「The Moon Struck One」が流れ、そのまま演奏へと突入する。
Graham Nashの「Southbound Train」に続いて、Lenne & The Lee Kingsの「Stop The Music」。
アップテンポだけどちょっともの悲しいメロディーに乗せて、
「Stop The Music、今は聴かせないで。Stop The Music、俺のこの耳には。
あのコを思い出させる音楽は全部止めて」と唄われる歌詞が心に突き刺さる。
Kate and Anna McGarrigleの「Heart Like A Wheel」のあと、
Lucinda Williamsの「Are You Alright?」と、穏やかなバラードが続く。
そして、Julie Millerのカバーで「I Can't Get Over You」。
「ずっとあれから努力してるんだ。キミの不在を受け止めること・・・」と唄うCHABO。
ダメだ、ダメだ。とうとう涙が流れてきた。ステージのCHABOがぼんやりとにじむ。
最後の曲は、Fairport Conventionの初期のヴォーカリストSandy Dennyの曲で
「Who Knows Where The Time Goes」。「時の流れを誰が知る」か。。。
ここでCHABOは、ひとまずバックステージへ姿を消す。
いつものように、アンコールの拍手がわき起こる。
隣の人と話をするわけでもなく、みんなひたすら拍手をし続ける。
そしてここにいるみんなのいろいろな想いを乗せながら、ライブはアンコールへと突入。
いつものような物販コーナーはなく、いきなりスライドギターで「You Gotta Move」を弾き出す。
そして激しくギターをかき鳴らし、Lowell Fulsonの「Everyday I Have The Blues」。
「Yeah~!!ってイエーッ!」とCHABOが叫び、みんなが「Yeah~!!」と応える。
手拍子しながら盛り上がるのだけれど、何故だか涙があふれてくる。
スローな曲よりもこういった激しい曲のほうが、心が単純に反応するのだろうか。
スタッフにひとしきり感謝の言葉を述べたあと、Sam Cookeの「You Send Me」。
曲は途中で、「ティーンエイジャー」や「モーニングコールをよろしく」へと変わっていく。
「カバー特集ということで、全部カバーでやらしてもらいました。
洋楽のカバーでやらしてもらったんだけど、邦楽のカバーちょっとやらしてもらう。
清志郎のカバー、やらしてくれ。RC、セルフカバー・・・ 「きみぼく」」とCHABO。
「君が僕を知ってる」を、CHABOは「きみぼく」と紹介した。
清志郎とCHABOとの間では、こう呼ぶのが一番ふさわしいんだろうな。
サビの「わかっていてくれる」のフレーズは、お客さんと交互に入れ替わって唄う。
ステージに清志郎がいるかのように、CHABOはスタンドマイクから身体をそらす。
気持ちをぶつけるかのようなBluesyなギターソロをしばらく続けたあと、
RCサクセションの珠玉のブルースナンバー「いい事ばかりはありゃしない」。
そしてCHABOは「ゴメン、これはさむよ」とスタッフに言って、予定外の「雨あがりの夜空に」。
CHABOもお客さんも、みんな涙・・・涙・・・。それでも天まで届けと、大きな声で唄う。
エンディングでは何度も天を指さし、「清志郎、聴こえてるか?」と言いたげなCHABO。
いつまでも鳴り止まない拍手・・・。
ここでCHABOは、RCサクセションの歌詞に関する話をひとつふたつ。
清志郎が初めて「いい事ばかりはありゃしない」をCHABOに聴かせたとき、
「金が欲しくて働いて眠るだけ」という歌詞が「とてもリアルでいいと思うんだけど、
もっと別な言い方したほうがいいのかな?」とペンディングになったとの事。
いろいろ考えたけどしっくりこなくてそのままにした事を、「いまとても良かったと思ってます」と言うCHABO。
また、「雨あがりの夜空に」の「雨あがりの夜空に吹く風が、早く来いよと俺たちを呼んでる」というフレーズが
スタジオ盤では変えられている事に触れて、
「プロデューサーに反対出来なかった自分たちが情けない」と話す。
そして、「夜の散歩をしないかね」を弾き語る。ファルセットで唄う声は、まるで清志郎のようだった。
最後は、Graham Nashのカバーで「After The Storm」。
「君に会いたい。会いたいよ君に。もう一度会いたい。話があるんだ」と唄うCHABOに、また涙。。。
CHABOは封筒から手紙を取り出し、「ヘイ、清志郎。聴こえてる? オレ・・・」と読み始める。
「ヘイ、清志郎。唄い続けることだよな。なぁ、清志郎。唄い続けるスピリットだったよな。
ヘイ、清志郎。わかってるぜ、キミの揺るぐことなきソウル・・・」と、清志郎に語りかける。
最後に「西暦2009年5月、キミの友達、仲井戸"CHABO"麗市」と締めくくり、
CHABOはステージをあとにした。
誰もいなくなったステージ、マイクスタンドがスポットライトに照らし出される。
お客さんは微動だにせず、誰もいないステージをいつまでもじっと見つめ続ける。
21時25分、清志郎に捧げる追悼ライブはすべて終了。
あの日からずっと、清志郎のことを想っていた。
そしてこれからもずっと、清志郎のことを想っていく。
だけど今日で、涙とはひとまずお別れにしたい。
清志郎の揺るぐことなきソウルは、決してなくならないことがわかったから。
ありがとう、清志郎・・・。ありがとう、CHABO・・・。
これからもよろしく。
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コメント
行ってたんですね、青山マンダラ。
「ROCKIN ON JAPAN」のCHABOのインタビュー読んで、
どんなライブだったのかなぁーって思ってました。
KANNさんのレポ読んで、
情景が目に浮かんでCHABOの声が聞こえてきて、
ちょっと涙目になっちまった・・・、
仕事中だってのに(苦笑)。
あのインタビュー読んで、
ちょっとづつ、自分の中でも変化があったかも。
いろんな想いが走馬燈のように頭の中駆け巡ってたけど、
受け入れられるようになったかな、うん。
何ていうのかな、
自分のやれることをちゃんとやって、生きていくっていうか、
大げさかもしれんけど、そんな感じです。
そうそう、あのインタビュー読んでて、
前に行った『Soul of どんと』のイベント思い出しました。
皆がどんとを偲んだりカヴァーを唄う中、
キヨシローはしっかり自分のライブをやってたなって。
そーいうことなのかもしれないな。
この間、タワレコに行ったら特設コーナー出来てたけど、
もう怒ったりしませんでしたよ(苦笑)。
投稿: yan | 2009年6月16日 (火) 15時34分
>yanさん
コメントありがとうございます。
あれからちょっと時間がたって、
気持ちも少しは落ち着いてきたような気がします。
でも、「ROCKIN ON JAPAN」とかの追悼本や「どん画」を読むと
またうるうるきてしまうという・・・
だけど、みんなこの事実を乗り越えようとして
必死に前向きに考えようとしているのがわかるんだな。
われわれは清志郎だけで生きているんじゃない。
それぞれ、自分自身を生きていかなければならない。
そのなかで、清志郎はこれからも僕たちのそばに居続ける。
投稿: KANN | 2009年6月20日 (土) 10時01分